2020年08月03日

Schnee Traum ~プロローグ~ 1月14日(木曜日)








 夢……





雪のない、初夏の街の風景に





友達とふざけあうその視線の先に





ぼくはいつも、一人の女の子を見ていた





その子が、あまりにも綺麗だったから







僕は、その子に…………

























『朝、朝だよ~』

 …………。

『朝ご飯食べて学校行くよ~』

 いつものように、俺はベットの上に居た。

 身体を起こし、カーテンを勢いよく開けると、凍てついた外の景色が広がった。

 寒さで縮み上がる毎日。

 だが、今日はそんな感覚すら忘れていた。

 夢。

 いつもは見ているのかさえもわからない夢。

 けれど、今日は覚えていた。

 夢の中で見た、

「ラベンダー色の髪の、女の子…………」



























 どこでしょう?

 目の前に広がっているのは雪景色。

 雪、雪、雪。

 白い家々。

 見たこともない造り。

 見たことのない人々。





 見たこともない、街…………。  




















 わたしは目を開けました。

 カーテンごしにも、雪明りで外が明るくなっていることがわかります。

 天井を見たまま、しばらくぼうっとします。

 横をむき、お気に入りのイルカのぬいぐるみを手に取ります。

 何もする気になりません。

 毎日、毎朝、毎晩……。

「浩之さん……」

 そっとその名前を呟きました。









 わたしの超能力(ちから)が安定し、友達が出来たのを見届けて、浩之さんはわたしから離れていきました。

 もう自分がいなくても大丈夫だと思って。

 でも、やっぱり違います。

 友達はわたしを特別な存在として見ていました。そして、それを目当てに、近づいてくる……。

 『普通』になることがいけないと言うかのように……

 無理して特別に慣れればいいのか、普通を押し通せばいいのか、わたしには分からない……

 気がつくと、そんな風に近づく他人から、離れようとしている自分がいました。

 わたしをわたしとして見てくれていたのは、

 本気で一緒にいてくれたのは、

 やっぱり浩之さん一人でした。

 でも、浩之さんの目に映っているのは違う女性でした。

 ――神岸あかりさん。

 生まれる以前から連れ添い、付き合い、ずっとここまで来た人。

 幼なじみの絆を破れるほど、わたしは強くありませんでした。

 離れていく浩之さんに、わたしは何も出来ませんでした。

 でも……。







 ―――浩之さん、わたしは、あなたが好きだったんですよ……。







 朝食の席で、わたしはママに朝見た光景の話をしました。

 雪で真っ白に彩られた景色、わたしが覚えている函館の街の景色ではありません。

 もしかしたら、昔いたところかもしれないと、答えが返ってきました。


 わたしが、ほんの少しの間だけいた街だと……

 それに付け加えて、今日も仕事で戻らないとママは言いました。


 いつだってそう。

 一度だって、この食卓で、愛を感じたことは、ありません……














 昼過ぎ、わたしは駅の前にいました。

 傍らに、荷物をおしこんだトランクを置いて。


 大好きな浩之さんも、一緒に助けた『浩之さん』もおいて。

 学校に行けば、またみんなに会わなくてはいけない。日増しに近づいていく浩之さんと神岸さんの仲を見続けなければならない。

 わたしには、耐えられそうにありません。

 だから、この街から離れようと、決めました。

 永久に家出がしたいわけではありません。そんなことができないのは、わかっています。

 ただ、少しの間だけ、自分の心を包んでくれるような場所が欲しい。

 自分のこころが、それに耐えられるようになるまで、離れていたい……

 行き先は夢で見た、あの街。どこにあるかも分からない、あの雪の街。

 吹き出しそうになるくらいおかしな行動だけど、今のわたしにはそれしか考えられませんでした。

 ポストに手紙を落とすと、ふぅ、と溢れ出す、息。

 その白い霧に包まれながら、わたしは呟きました。












「北へ、行こうと思います……」



























ALGOL PRESENTS from “To Heart” to “Kanon”



Schnee Traum






ラベル:Schnee Traum
posted by あるごる。 at 21:00| 東京 ☀| Comment(0) | SS | 更新情報をチェックする

2020年08月02日

過去作「Schnee Traum」をブログに掲載します。

こんばんは、あるごるです。
前言通り、明日21時から。毎晩3話ずつ、連続掲載します。

もっと早く、こうしていればよかったです。

ずっと昔にコメントをくれた、こんさん。大変、お待たせしました。
真夏の夜の「雪の夢」は、あなたのために。



posted by あるごる。 at 21:00| 東京 ☀| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2020年07月31日

迷える彼は仲間たちと別解である[y]を探す

好きじゃない作品の二次創作をする人って、まずいないと思うんですよ。
もちろん、その「好き」には「作品として」と「商業的に」のふたつがあると思うのですが。

こんばんはあるごるです。
前略、久しぶりにSSを書きました。

自サイトをゼロから作る元気はないので、昔のように、投稿です。
投稿サイトを見比べ、様々な理由で、置き場はpixivにすることにしました。

書きかけのままサイトが消え、時節を逃して永遠のお蔵入りになった作品もあり、書くのは怖かったです。
ですが、結局脱稿まで待てず、見切り発車で第一話をあげてしまいました。
ずっとストーリーを考え続けるのが、こんなに楽しいことだって、忘れてました。

それだけ好きになってしまったんです、「ぼくたちは勉強ができない」が。


書き出したのは、緒方理珠ルートのifストーリー。
ぼくたちは勉強ができないSS「Another proof」


(追記)
ポートフォリオとして、いくつかの作品も、pixivにのせようかと思います。
私の代表作「Schnee Traum」は、htmlのフォントいじりが再現できる環境がないため、本当に今さらですが、このブログに起こしたいと思います。
posted by あるごる。 at 22:00| 東京 ☔| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2020年05月25日

ぼくたちは勉強ができない・機械仕掛けの親指姫編完結

ko.jpg


……失礼、思わず本音が。
いい年してますし、とりあえず次元が違う話。落ちついて、稚拙な表現の代わりに先人の知恵をお借りすることにしましょう。


“ベクターキャノンモードヘ移行”
“エネルギーライン、全段直結”
“ランディングギア、アイゼン、ロック”
“チャンバー内、正常加圧中”
“ライフリング回転開始”
“撃てます”


ああもう羨ましいったら羨ましいったら羨ましいったら羨ましいったら羨ましいったらうらやましいったらうらやましいったらありゃしない!
きれいに落着させたとはいえ実質関城さんシナリオであって幽霊子供は本当に必要だったのかという気がしますが終わり良ければすべて良しというか完全に作者の掌の上な気がしてああ快楽堕ちっていうのはこういうことなのね妙な悟りも得ましたが控えめに言って最後のやり取りは最高で嫉妬でボクはいっぱいいっぱいです。

キスでこんなに心が乱されたのは祇条さん以来だ…

posted by あるごる。 at 20:58| 東京 ☀| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2020年03月09日

今週のぼくたちは勉強ができないを読んで(ネタバレあり)

Twitterやっておけばよかった…後悔先に立たず、こんばんはあるごるです。
何の脈略もなく現世に戻って参りましたが、叫び遅れるのは嫌だ!

いや、見ました奥さん今週のぼく勉!
ルート完結大団円、と思いきや…

「あ、あかんやつや、これやったら絶対あかんやつやでぇ!」

現代のコラ業界では火ノ丸相撲(これも読んでましたけど)がお作法らしいですが、頭には「もっと恐ろしいものの片鱗を」のポルナレフばかりが思い付くばかりなのが、ロートルの性でございます。
い、いゃあしかし、誰もが思い付くから目新しさはないけれど、でもやらなかったこと。
しかもその舞台、もとい媒体は腐ってもマンガ誌の最大手、週刊少年ジャンプ。コロナでインドアが進む日本社会に愉快な爆弾、この界隈に論壇を形成してしまうとは……。
作品の価値、うるかルートの涙の重さ、ネガティブなことや不安なことは山ありますが、でもなお、作者の筒井大志さんの蛮勇、私は大好きです。
我が推し、緒方 理珠ルート、心から期待していますよ!!


まさかのパラレルルート突入とはね!


【追記】
成幸任せの恋に落ち(自分ルートの)時には誰かを傷つけたとしてもその度心痛める様な時代じゃないってことですねこの分岐は
#ぼく勉

勢いでTwitter始めてしまった。
posted by あるごる。 at 21:28| 東京 ☀| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2019年07月19日

忘れない。

AIR、Kanon、CLANNADを、息を飲むような美しさで映してくれたこと。
決して忘れません。

もはや、円盤ひとつ買えないこの身でも、いま改めて、感謝の意を伝えずにはいられません。
そして、悪魔の業火が悲しいと、悔しいと言わずにはいられません。

京都アニメーションさん、忘れません。

posted by あるごる。 at 22:53| 東京 ☀| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2017年01月07日

夢の跡

何かの拍子で「あるごりうむ」「Algolium」を検索してくださった方に、館の運営人としてせめてもの誘導を。


【farewell.jp時代】
http://web.archive.org/web/*/http://algolium.farewell.jp

【secret,jp(ロリポップ)時代】
http://web.archive.org/web/*/http://algol.secret.jp/
※2017.11.22追記
掲載SSのお求めがございましたらコメント欄にてご連絡ください。
また、メイドカフェ、特に「ブリジット」についての情報をお求めの方もコメント欄にて。連絡先準備して対応いたします。

posted by あるごる。 at 00:00| 東京 ☀| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記 | 更新情報をチェックする