2007年03月10日

Kanon第23夜(隠し玉か禁じ手か)

まさか、真琴と見せかけて「沢渡お姉さん」とは予想外でした。
この人が顔出し台詞ありで映像化されるなんて……ずいぶん思い切った隠し玉を投げてきたものですね。

しかし、悲しい。この大技を使ってなお、最後のあゆ~名雪の〆方に満足がいかない。Kanonの究極「3つ目の願い」をもってしても泣けなかったです。
名雪恋愛エンドじゃないから? あゆの台詞に問題があった? オリキャラの沢渡さんを登場させたから?
いいえ、そんなことはありません。それどころか名雪が駅前のベンチで「約束、だよ」というという行為は、信じられないほど大きな意味合いを持つはずなのです。
あゆの台詞であるこの言葉を、今このときに言うことによって、7年前と今の悲しい思い出を、未来につなげる第一歩の想い出に塗り替えるという、本当に本当に大きな場面だと思うのです。
原作に忠実だった京アニ版の、思い切った一手だったと思うのです。
なのに、どうして? どうしてここまで納得できない?

……言っててもしょうがありません。
私、腐ってもSSの書き手、ここは一つ、どこに引っかかったのか、どんなだったら納得がいったのか、この23話のシナリオに赤入れしようと思います!
無礼千万は百も承知ですが、「この話、こうなって欲しい」「こんな展開があったらいいのに」というところから、SSは生まれてきたんだと、私は思ってますから……。

※あらすじの書き方は「アニすじ!」さんのKanonあらすじの書き方を参考にさせていただきました。


■吹雪の外
祐一、雪の上に倒れている。
何者か、ライトをつけた車から祐一に気づき降りてくる。
祐一、顔を上げる。
真琴らしき女の子、ぼやけた視界に見える。
[祐一]「真琴……?」
祐一、再び目を閉じる。

■■■■■オープニング■■■■■

■部屋の中
祐一、知らない部屋のベッドの上で目覚める。
あゆのリュックと天使の人形がテーブルの上に置かれている。

●タイトル●第23話 茜色の終曲(フィナーレ) ~finale~●

■再び、部屋の中
ガスコンロの上にミルクの入った鍋がかけられる。
カーテンの向こう側から声がかけられる。
[女性]「ごめんなさい、起こしたかしら、祐一君」
[祐一]「あ、あの……ここは」
[女性]「ちょっとだけ待っててね。いまミルクを暖めてるから」
スリッパしか見えず、相手は何者かわからない。
[祐一]「(誰だ……? 俺の名前を知っているのか?)」
カーテンが開き、レーズンパンとミルクを持った女性が姿を見せる。
その女性の顔は、大人びてはいるが、真琴とうりふたつだった。
[女性]「身体は温まった? 無理して起きなくていいからね」
[祐一]「は……はい、大丈夫です」
女性、ベッドのそばのテーブルに物を置く。
[女性]「はい、ゆっくり飲んでね」
「はぁ…」
祐一、差し出されたミルクを怪訝そうに受け取り、飲み始める。
女性は祐一の様子をじっと見つめている。
[女性]「相沢祐一君」
[祐一]「あっ…」
祐一、ミルクから口を離し女性を見る。
[女性]「よねー、やっぱり」
[女性]「救急車を呼ぼうかと思ったんだけど、私のマンションが近かったから。重くて大変だったのよ? また、いとこのところに泊まってるんでしょ。電話、しなくていい?」
[祐一]「あ…あの、助けてくださって、ありがとうございます。でも、何で俺のことを」
[女性]「わかったのか? 顔が似てるし、私の名前呼んだから。ぜったい祐一君だと思って」
女性、マグカップに手を伸ばす。
祐一、ひとまずマグカップを手渡す。
[祐一]「いえ、そうじゃなくて」
[女性]「今は家族と別れて、ここでひとり暮らしなの。昔はご近所だったけどね」
[祐一]「(ご近所?)」
祐一、何かを思い出す。
[祐一]「あっ」
白い帽子をかぶり、白い半そでのワンピースを着た女性が晴れた日の木陰に立っている。
[祐一]「あ、ああ……沢渡さんのところのお姉さん、真琴さん!」
[沢渡]「そうよ、沢渡真琴。久しぶりね、祐一君」

■水瀬家
赤いコートを着た人影、走って水瀬家に向かっている。
北川、ドアを開ける。
[北川]「来てくれたか、悪ぃ、こんな時間に」
フードをかぶった赤いコートの人物は香里だった。
[香里]「相沢君はまだ?」
香里、雪を払いながら玄関の中へ。
[北川]「ああ、水瀬は部屋から出てこないし、俺どうしたらいいかテンパっちゃってさあ水瀬さん置いて、こんな雪の中、本当にどこ行っちまったんだよあいつ…
[香里]「名雪は、二階ね」

■名雪の部屋
名雪、赤いビー玉の後ろに膝を抱えて座っている。
ノックの音。時間はもう22時15分。
[香里]「名雪、香里よ。お母さん、大変だったわね」
コートを着たまま、名雪の部屋の前に立つ香里。
[香里]「開けてくれない、名雪」
少し躊躇いがちな香里の声。
[名雪]「ごめん、今誰とも会いたくないの」
名雪の声には全く抑揚がない。
[香里]「相沢君を、そうやって追い出しちゃったのね」←いや、祐一は勝手に暴走していったんですが
香里、目を閉じる。
[香里]「あなたの気持ち分かるわ。私も、こないだまでそうだったから」
名雪、部屋の中でうつろな目をしている。
[香里]「私の妹、栞ね。病気で入院してるのは言ったわよね……あの子ね、もうすぐ死ぬって言われていたの
名雪、かすかに驚く仕草。
[香里]「私、それが辛くて、ずっとあの子から目をそむけてた。相沢君や、あなたたちがいてくれなかったら、今でもそのままだったと思う。あなたには、私と同じ間違いをしてほしくないの。心を閉ざして、悲しみに浸って、周りの人をもっと苦しめるようなことはしてほしくない」
名雪、足元のビー玉に視線を向ける。
[香里]「相沢君も、栞のことでずいぶん悩んで苦しんでくれた。だから、栞はいま、頑張って生きている。私にね、自分は大丈夫だから、水瀬さんのところに行ってあげて、って言ってくれた。
香里、何かを吹っ切るように顔を上げる。
[香里]「彼に、心配かけちゃダメよ。待っててくれる人が辛い顔をしていたら、不安で、無理しちゃうんだから
名雪の瞳は、動かないまま……。
[香里]「しっかりしなきゃね、お互い」

■水瀬家一階
階段下、北川とぴろが待っている。
[北川]「どうだった?」
[香里]「時間がかかると思う。でも私、ずっとついてるから」
[北川]「え、でもお前、栞ちゃんのそばにいなくていいのか」
[香里]「あの子が言ったのよ。自分は大丈夫だから、水瀬さんのところに行ってあげてって」
家の電話が鳴る。
[北川]「出て、いいのかな」
香里、ためらわずに受話器を取る。
[香里]「水瀬です……相沢君!?」[北川]「あ…」
[香里]「今どこ?……そう、まだ動けないの。いいわ、私と北川君がいるから……」
一階のシーンがフェードアウトし、二階の部屋の中の名雪の姿へ。

[秋子]『ええ、私たちは家族なんだから、支えあっていかないとね』
言ったときの秋子さんの姿がよぎる。
[名雪]「ぁ……」
床に落ちたままのビー玉。名雪はまだ膝を抱えたまま……

■沢渡さんのマンション
[沢渡]「何か、あったの?」
ベッドの上でうつむく祐一。
[沢渡]「もう、高校生よね。昔は私の胸ぐらいしかなかったのに、大きくなっちゃって」
祐一、無言。
[沢渡]「どうしたの? また、名雪ちゃんとケンカしちゃった?
[祐一]「俺は……昔のままです」
[沢渡]「え?」
[祐一]「あの頃と何にも変わっていない。誰かが苦しんでいても、何もしてやれない。何の力もなくて、ただ、黙って見ているだけで、名雪にも、何もしてやらなかった」
祐一、肩を震わせる。
[祐一]「栞も、舞も、真琴もっ、みんな俺を待ってたのに、俺一人、何もかも忘れて、それに、あゆも。あゆにも何もしてやれなかった、何も気づいてやれなかった、約束してたのに、そのことさえ忘れてっ……同じことを繰り返してるだけだ……俺はっ……」

暗い部屋の中にいる名雪、ゆっくりと瞳を開く。

沢渡さん、泣く祐一の手の上に自分の手を重ねる。
[沢渡]「昔もこんな風に自分のこと、いろいろ聞かせてくれたわよね。知ってる? 北国の木はね、年輪がはっきりしているんですって。冬の寒さをじっと耐えて、そうして年輪が増えていくの。そうやって育った木は、強く丈夫に成長するわ。人間も同じ。悩んだり苦しんだりして、強く優しく、なれるんじゃない」
[沢渡]「約束を、していたのね。でも祐一君、あんなに遅い時間じゃ、誰も来てくれないんじゃないかな」
[祐一]「……っ!」
祐一、何かに気づいたように目を開ける。
[祐一]「……そう、ですよね……『学校』にあんな夜遅くまでいたら『魔物』が出てきちゃいますね」
首をかしげたあと、それでも微笑む沢渡さん。
[沢渡]「雪の中で倒れちゃうぐらい、大事な約束なのよね。だったらなおさらゆっくり休んで、元気になって、それから行ったほうがいいんじゃない。名雪ちゃんも、心配するわよ」
(真琴、舞、栞のラストシーンが重なる)
[沢渡]「人はね、一度に一つのことしか、できないんだから……」

[沢渡]「でももし誰かと約束をしたなら、ちゃんと守ってあげなくちゃね」

外はいつしか夜が開けて、昼になっていく。

祐一、目覚める。
[祐一]「ん……っ」
部屋に沢渡さんの姿はない。
[祐一]「真琴さん?」
祐一、置手紙を見つける。(ご丁寧にぶどうとキツネの絵のついた便箋と鈴つきの鍵)
       祐一君へ
 出かけてきます
 鍵はポストに入れて
いってください
 おなかがすいてたら
 冷蔵庫の中のものを
 チンして食べて下さい。
        真琴

祐一、部屋の電話から電話する。
[祐一]「香里か……そうか、ずっといてくれたんだな。悪い、もう少し時間もらっていいか?…ああ、じゃあ、頼む」
祐一。冷蔵庫を開ける
[祐一]「あぁ…」
中にあったのは皿に乗った肉まん。
[祐一]「まさかな」
祐一、あゆのリュックを手に沢渡さんのマンションから外へ。

■林の中~『学校』
祐一、再びあゆとの約束の場所へ。
あゆの台詞が耳の中で繰り返す。
[あゆ]『ごめんね、祐一君。もう会えないと思うんだ』

(Last regretsに乗せて、セピア色のあゆとの回想シーンに)

祐一、晴れ渡った空の下、あの樹があった切り株のそばに座る。
[祐一]「……指切り、したよな」


■■■■■■Bパート■■■■■■


■水瀬家(?)
祐一の部屋で名雪から借りた目覚まし時計が鳴る。
『あさ~、あさだよ~ あさごはんたべてがっこういくよ~』
[祐一]「うん……」
すっかり明るくなった部屋はいつもどおり。
[祐一]「今日は日曜だろ」
祐一が着替えて部屋から出ると、あゆが駆け寄ってくる。
[あゆ]「おはようっ、祐一君」
[祐一]「なんだ、あゆか。何でお前がこのうちにいるんだよ?」
首をかしげるあゆ。
[あゆ]「祐一君、おかしなこと言ってるよ? ボクだってこのうちの家族なんだから、いるのは当たりまえだよ」
[祐一]「あ、そっか、そうだったよな」

祐一とあゆ、2人で階段下へ
[あゆ]「今日はね、秋子さんに、クッキーの作り方を教わるんだよっ」
[祐一]「秋子さんもムダなことを」
[あゆ]「うぐぅ! そんなことないもん」
[祐一]「お前の作るクッキーは、どうせまた碁石だろ?」
[あゆ]「前のは作り方を知らなかったからだよ。今日はちゃんと秋子さんに教わるもん」
[祐一]「秋子さんに迷惑はかけるなよ」
[あゆ]「うん、大丈夫だよ、えへへっ」

■リビング
[あゆ]「おはようございます!」
リビングには制服を着て寝ている名雪と、元気な秋子さんがいた。
[秋子]「おはようございます、あゆちゃん、祐一さん」
[祐一]「おはようございます」
あゆ、嬉しそうにテーブルに着く。
[名雪]「うんにゅ……おはよ、ゆういち、あゆちゃん」
[祐一]「今日も部活か、頑張るな」
[名雪]「うに……がんばるおー」
名雪、テーブルに寝崩れる。
[秋子]「あゆちゃん、朝ごはんを食べ終わったら、クッキー作りをはじめますからね」
[あゆ]「うんっ! 祐一君、食べてくれるよね?」
[祐一]「絶対に嫌だ」
[あゆ]「う、うぐぅぅっ…そんなにはっきり言わないでよぅ」
あゆ、涙目。
[秋子]「今日のは、一味違うものね」
[あゆ]「そうそう!」
[祐一]「ま、とりあえず見た目が旨そうに出来てたら、食べてみてもいい」
[あゆ]「ほんと!」
[祐一]「旨そうにできてたら、だぞ」
[あゆ]「うんっ、ボク、頑張るよ!」
あゆ、満面の笑顔。
[あゆ]「だから、ボクのクッキー、楽しみにしていてね」
だが声はだんだん現実の音から離れていく……。

■『学校』
祐一、目を覚ます。外は既に夕暮れ。
[祐一]「俺はまだ、この場所にいるんだな」
いるのは祐一だけ、辺りは風の吹きぬける音しかしない。
祐一、雪を肩に積もらせたまま、しばらく呆然としている。
[祐一]「この街に引っ越して来たときも、同じような目に遭ったっけ。もっとも、あの時はベンチだったけどな」
まだ待ち続ける祐一の耳に、あゆの声がよみがえる。
『やっぱり待ってた人が来てくれることが一番うれしいよ。それだけで、今まで待っててよかったぁって思えるもん』

『祐一君がボクのこと好きでいてくれるのなら、ボクはずっと祐一君のことを好きでいられるんだと思う』

[祐一]「俺は今でも、お前のことが好きだぞ」
[あゆ]「ボクもだよ、祐一君」

祐一、驚くが、あえて振り向かない。
[祐一]「……だったら、どうしてもう会えないなんて言ったんだ」
[あゆ]「……もう、時間がないから」
雪原に、祐一と、そしてあゆの姿。
[あゆ]「今日は、お別れを言いにきたんだよ」
[祐一]「俺は、忘れ物を届けにきたんだ」
[あゆ]「見つけて……くれたんだね」
[祐一]「……苦労したぞ」
祐一、リュックを持って立ち上がる。
[祐一]「本当に」
祐一が振り向いた先には、夕陽を背に、出会った日の姿のあゆがいた。
[あゆ]「ありがとう…」
祐一、あゆに近づいてリュックを手渡す。


「祐一君」
「遅刻だぞ、あゆ」
「ボクたちの学校は、来たいときに来ていいんだよ」
「そうだったな」
「うん」
「また会えたな」
「うん」
「本当に、これでお別れなのか」
「…うん」
「…すっとこの街にいることは出来ないのか?」
「……うん」
「そうか……」
「……」
「……だったら、だったら、せめて三つ目の願いを言ってくれ。約束したからな、願いを叶えるって……だから、せめて……俺に最後の願いをかなえさせてくれ」
「そう、だね…」
「……」
「……」
「……」
「…お待たせしました、それでは、ボクの最後のお願いです」
「祐一君……」

「ボクのこと……ボクのこと、忘れてください。ボクなんて、最初から、いなかったんだって……そう、思ってください」

「ボクのこと、うぐぅ、忘れて…っ……ぅっ……」
「……本当に、それでいいのか。本当にあゆの願いは、俺に忘れてもらうことなのか」
「だって、ボク、もうお願いなんてないもんっ。本当は、もう二度と食べられないはずだったたい焼き、いっぱい食べられたもん」
「だから……だから、ボクのこと、忘れてください」
「……っ!」


祐一、あゆを抱き寄せる。
[あゆ]「祐一君…ボク、もう、子供じゃないよ」
[祐一]「お前は子供だ」
[あゆ]「そんなこと、ないもん…」
[祐一]「ひとりで先走って、回りに迷惑ばっかかけてるだろ」
[あゆ]「うぐぅ」
「そのくせ、全部自分で抱え込もうとする。その、小さな身体に全部……お前は、ひとりぼっちなんかじゃないんだ」
[祐一]「俺も、同じだ。自分のことしか考えてなくて、から回って、いろんな人に迷惑をかけちまった。ひとりぼっちなんかじゃ、なかったのにな」
[あゆ]「ぁ…」
[祐一]「その願いはダメだ。聞けない」
[あゆ]「祐一、君」
[祐一]「俺がお前を忘れられるわけないだろ!」
[あゆ]「……お願い、決めたよ」
[祐一]「……!」
[あゆ]「ボクの最後のお願いは……」
そのとき強い風が吹きつけ、あゆの言葉が消える。
[祐一]「……なんて言ったんだ? あゆ」
[あゆ]「……」
[祐一]「あゆ!」
[あゆ]「祐一君、ボクの身体、まだあったかいかな」
[祐一]「当たり前だろ」
[あゆ]「よかった…」
次の瞬間、あゆの身体が光の粒になって風にさらわれていく。
膝をつく祐一。
[祐一]「あゆ…」
そこには、リュックも、天使の人形も、何も残っていなかった……


夢……
夢を見ている
また同じ毎日の繰り返し
終わりのない朝を望んで
そして 同じ夢の中に還ってくる
赤くて 白くて 冷たくて 温かくて 悲しくて
そして また同じ毎日の繰り返し
ずっと前から 何年も前から気づいていた
終わらない夢を漂いながら……
来るはずのない夜明けを望みながら……


(ベンチに座る祐一と、その隣に座る子供のあゆが、同じ雑踏を見ている)

ボクは、ずっと同じ場所にいる
声の消えた雑踏
顔のない人が目の前を行きかう
誰も たった一人でベンチに座っている子供のことの姿なんか気にも留めない
人を待っている
来ないと分かっている人を
もう会えないと分かっている人を
何年も 何年も……
ボクは ずっと待っていた
繰り返される夢の中で 来るはずのない夜明け
だけど……

(空を見上げる沢渡さん)
(水瀬家のリビングで寝てしまった北川と窓から空を見上げる香里)
■水瀬家リビング
[北川]「……水瀬、大丈夫かな」
[香里]「心配いらないわ。名雪は、強いから。私なんかより、ずっとね……」
名雪の部屋。真っ暗なままだが、畳まれたパジャマがあるだけで名雪の姿はない。



■駅前のベンチ
祐一、雪を積もらせたままベンチに座っている。
[名雪]「祐一、探したよ」
祐一、ゆっくりと顔を上げる。
[祐一]「ああ……心配かけたな」
目の前に立っていたのは、髪をなびかせた名雪だった。
[名雪]「それは、こっちの言うことだよ」

祐一、名雪の前にひざまづく。
[祐一]「名雪、俺、いつもお前に頼ってた、甘えてたんだ……ごめん」
名雪、祐一の目の前で自分も膝をつく。
[名雪]「わたしこそ、ひどいこと言った、祐一に」
[祐一]「名雪、俺お前に」
[名雪]「これでおあいこ」
[祐一]「おあいこ…」
名雪、涙ぐみながらも、強くうなづく。
[名雪]「うんっ、おあいこ、だよ」

降りしきる雪。
名雪、祐一の頭の雪を払ってあげる。
[祐一]「病院から、何か連絡あったか」
[名雪]「ううん」
[祐一]「そうか……」
名雪、自分の涙を拭う。
[名雪]「祐一……わたし、強くなるよ」
[祐一]「ああ…」
[名雪]「祐一、悲しそうな顔してるよ?」
[祐一]「光の加減だろ」
名雪、祐一を抱きしめる。
[名雪]「頑張ろう、祐一……約束、だよ」
[祐一]「ああ」
[名雪]「もし約束破ったら」
[祐一]「イチゴサンデーおごる」
[名雪]「ダメだよ、イチゴサンデーでも許してあげない。……ふぁいとっ、だよ、祐一」
[祐一]「ああ……ふぁいと、だ」
[名雪]「うん…っ」
立ち上がるふたり。背景は再び雪振る街へ。

また耳の中に蘇るあゆの声。

『やっぱり待ってた人が来てくれることが一番うれしいよ。それだけで、今まで待っててよかったぁって思えるもん』

[祐一]「ずっと、待ってたんだな……ここで」
祐一、目を拭いながら夜空を見上げる。
[祐一]「来る人なんか、いないっていうのに……7年間も」
[名雪]「…雪、積もってるよ」
[祐一]「……!」
驚く祐一。正面には、名雪の姿。
[祐一]「……そりゃあ、何時間もここにいるからな」
[名雪]「一つだけ、聞いていい?」
[祐一]「ああ」
[名雪]「寒くない?」
祐一、何かを思い出したように笑う。
[祐一]「……寒くない」
[名雪]「じゃあ、今日はなにもあげない」
名雪も笑って、涙ぐむ。
祐一、膝をついてうつむく。
[祐一]「名雪……ごめん、本当にごめん。お前だけじゃない、北川や香里にまで迷惑かけて……」
[名雪]「いいよ……祐一、辛かったんだよね……7年前も」
[祐一]「それは、俺の台詞だ。俺、お前の気持ち、全然考えてなくて……7年前も、今も」
祐一、名雪に顔を上げる。
[祐一]「聞いてくれ、名雪。約束する」
[名雪]「うん」
[祐一]「俺には、奇跡は起こせないけど」
名雪、弾かれたように顔をあげる。
[祐一]「でも、名雪のそばにいることだけはできる」
祐一、穏やかに笑って続ける。
[祐一]「約束する。名雪が悲しいときには、俺がなぐさめてやる。楽しいときには一緒に笑ってやる」
[祐一]「冬も、春も、夏も、秋も、そして、また雪が降り始めても、俺はずっとここにいる」
[祐一]「俺は、名雪と……本当の家族になりたいから」
名雪、あの日の雪うさぎのように何かを頭にのせる。
それは、録音が出来る、あの猫の目覚まし時計。
[名雪]「えへへ、いまの録音、しちゃったよ――祐一、信じても、いいんだよね?」
[祐一]「ああ」
[名雪]「わたし、消さないよ。だから、ずっと証拠残ってるよ。本当にいいの? わたしに約束してくれる?」
[祐一]「ああ、約束だ」
[名雪]「うんっ――約束、だよっ」
名雪の涙を浮かべた笑いに涙を流す祐一。どちらからともなく2人抱き合う。
[祐一]「もし、約束破ったらイチゴサンデーおごる」
名雪、祐一の額に額をつけて、目を閉じる。
[名雪]「ダメだよ……イチゴサンデーでも許してあげない」
[祐一]「それは厳しいな」
[名雪]「うんっ」
名雪、抱き合った体を少し離す。
[名雪]「祐一、わたし、本当はあの目覚ましにメッセージを吹き込んできたんだよ」
[祐一]「え?」
[名雪]「頑張ったの。けど、いまここで言うね。わたしも、祐一と一緒に、頑張っていきたいから」
[祐一]「ああ」
[名雪]「今までずっと、言えなかったけど……わたし、祐一のこと……」
背景は再び雪降る街へ。




夢……
夢が終わる日
雪が 春の陽だまりの中で溶けてなくなるように
面影が 人の成長と共に影を潜めるように
想い出が 永遠の時の中で かすんで消えるように
今 永かった夢が 終わりを告げる
最後に 一つだけの願いを叶えて
たった一つの 願い


ボクの 願いは……

【終】


【3/11 22:11 追記】
見ていただいた赤入れの要諦は
1:祐一が自分の非を口に出して言う。
2:香里が名雪に対して言う台詞を変える。
3:名雪の決着を可能な限り原作仕様に。
4:あんないいヤツ・北川を情けない男にしない(笑)

1は、名雪とあゆに対して。特にあゆに対する台詞は一箇所しか直していませんが、自分の中ではかなり比重が大きいです。
祐一は、あゆに「お前はひとりぼっちなんかじゃ」と諭す前に、自分も沢渡さん、北川、香里に助けられるまで前が見えなくなっていたことを口にするべきでしょう。『自分もあのときから変わらない子供なんだ、だからまだ別れるには早いだろう!』って言うべきでは?
2は、自分を同じ立場においてみれば分かるはずです。自分の大切な人が危篤状態になっているのに、友達の大切な人が「もうすぐ死ぬ」なんて断言されたら、自分の方(この場合は秋子さん)も死ぬんだと連想してしまうじゃないですか。デリカシーなさ杉!(笑)栞は祐一と名雪たちに会うことで今も生きているといってあげなきゃ…。
3はそのまま。強引かもしれませんが祐一にこのぐらいの懺悔は必要だろうよ、と。アレでもおあいこにすると、こういう男はつけあがりますよ名雪さん^^

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