数が増えて世間への露出が増えて、いつか出るかと思っていたけれど、ついに出てしまったか…メイドさんへの危害。
上野の地下ってことはDIMENSIONかな……可哀想に……。
とにかくそのニート28歳はドンキ前で磔刑に処したい。
追記:
ニュース動画を見ましたが、DIMENSIONで間違いないよう。http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn/20060127/20060127-00000009-nnn-soci.html
またマスゴミラッシュが始まるかと思うと……はああ。嘆息するしかないですね。
末筆ですが、DIMENSIONと恐ろしい思いをしたメイドさん二人、本当にご愁傷様です。
沈みついでに、ビターなSSも。
窓の外で、風に竹林が揺らいでいた。
器用なものだ。中心の節を大き左右に振りながら、横に伸びた葉がそれぞれ震えている。
こんもりとした緑色が一方向に靡くさまは、波にあおられる磯巾着のようだった。
まるでこういう生き物が、自分の意思で手を伸ばし空気中の餌を捕まえるかのよう。
その奇妙さの向こう側。唐突に、まったく動かない鈍い色が一つ、乃梨子の目に留まった。
あの日見ていた夢は、これからきっと、叶えられるものもあるだろう。
あの日にあった現実は、今、すべてが夢の中にある。
この焼却炉もその一つ。リリアン女学園ほどの学校でも、置かれていたそれは、日本にありふれたものだった。
塗り直されたような銀色に光るそれは、投入口にガムテープで封がされ、見上げたさらにその先にある傘の先から煙を吐き出すことは二度とないだろう。
口の前に突き出した受け皿だけが土色に錆び付き、その天板が鱗のように剥がれ落ちそうになって、じっとしている。
乃梨子は側面にあるハンドルを引いてみた。だが、ガムテープ以外にも歯止めがしているらしく、蓋は空気溝すらのぞかせなかった。
あっさり見切りをつけると、重々しい蓋を見つめ、その中身を空想する。
中学校の時は、この焼却炉が好きだった。普段の清掃時間では、黒いゴミ袋がたまっているだけで、すっぱい嫌な匂いしかしなかったが、放課後やイベントがあったときは、赤々とした炎が喜んだように手を伸ばしてきた。放り込んだ袋は、まるで炉の中の魔物に食い荒らされるかのように、いたるところから穴が開き、縮んで、はらわたをさらけ出す。それを瞬く間に炎が飲み込み、ばっと顔にかかる熱気の量を増やすのだった。
この時間はもう遊び場だった。この機を逃すまいと、みな、辺りに落ちているものを何でも拾って入れた。木の葉、空気の抜けたソフトテニスのボール、古い教科書。
そこから沸き上がる煙がダイオキシンと言う有害物質を含んでいて、人命に関わるなんてその頃の……いや、それより前に生きてきた生徒たちの誰が考えていただろう。
おそらく、この炉自身も。何千、何万といる仲間たちが、未来にわたって存在価値を否定される日が来るなどと、ほんのひと時でも考えていただろうか。
校地の端。ここだけ、群青色のアスファルトに固められていた。
小さいシャッター音すら、耳障りに気づくほどの場所だった。
「もう動かない焼却炉の前で物思いに沈む白薔薇のつぼみ、と」
「そうですか」
視線すら向けず、乃梨子は答える。我ながら失礼な態度とは思ったけれど、愛想よくする気にはなれなかった。
「いや、正直乃梨子ちゃん、なかなかいいショットが取れなくてさ、困ってたんだ。志摩子さんは妙に勘が鋭くて、気づくと身体で隠しちゃうし」
思った以上に猫っ可愛がりだわ。と、カメラを下ろした武嶋蔦子は屈託なく笑った。
「蔦子さまは」
それに気を使うこともなく乃梨子は、
「ゆきがとけたら、なんになるとおもいますか?」
とぶしつけに言った。
「私は『なる』と思うけど、違うかな」
乃梨子の目と口が丸く開いた。
「蔦子さまは分かっていらっしゃるのですね」
「さてさて。急に先輩の語学力を試してどうしたのかな?」
蔦子は、先ほどとは違った醒めた笑みを浮かべた。素の表情、と言ったほうが、いいのかもしれない。
「この学園にも、同じようにものを見れる人がいて嬉しかった」
それだけです、と乃梨子は心地、微笑んだ。
「なるほど、天使たちの牧場に、イラついちゃったか。白の伝統なのかもね」
「白の?」
「先代の白薔薇さまも、そういう方だったから。正直に言うと、ここで何枚も撮らせてもらったな」
気づいても視界にすら入れてもらえなかったけど、と手を振る。
「今の乃梨子ちゃんと同じようなことを考えていたんだと思う」
「この先の未来に、何があるんだろうとか」
「そこまで積極的じゃないと、私は思ってたかな」
蔦子は右手を首筋に当てた。
「乃梨子ちゃん、音楽嫌いでしょ」
「え」
唐突に言われて乃梨子は狼狽した。
「こないだ、CD屋の前でしかめ面してるの見た」
動作で肯定はしなかったが、乃梨子の答えは十分伝わっていた。
「多分、私と同じなのよ、そこのところだけは。華やかな嘘には、酔えない感じ」
いいながら蔦子はフレームの向こうに顔を隠す。
「こうしてファインダーをのぞくとね、わかるんだ、カメラ向いてる時はみんな必ず顔に嘘ついてる。特に笑顔に多いけど」
「だから……今日のように」
「隠し撮りっていっていいわよ。そう、そうする」
わずかに覗いている目が、疲れた後輩を慈しむように、細められる。
「だからああいう引っ掛けにもかからない」
「疲れませんかか、演じるのは」
「その辺が、年の差って思えばいい」
乃梨子と蔦子は二人がかりで焼却炉の蓋を開けた。
並んで埃っぽい空洞の中には、白いアルトリコーダーが一本だけ、転がっていた。
「骨みたい、って行ったら白けますね」
「白けるね」
そういえば風が止まっているな、といまさら乃梨子は思い出した。
「人間は、獣の中で唯一、火を眺めるのが好き。語りたくなるとか、落ち着くとかいうけれど…」
「残酷な気持ちを、投影できるからかもしれません」
「そうかもね」
蔦子は乃梨子の肩に手を置いた。
「天使相手に疲れたら、いつでもおいで。荷の多少は背負ってあげるからさ」
乃梨子は、答えず、満足そうな顔で、頷いた。
わいせつ目的って…。いくらメイドさんが可愛くてもなぁ、おい。
こんなん出てしまうと勤めてる側も警戒しちゃうよね。死ぬほど大嫌いだ、この手の犯罪。
まあ、警察が見つけてくれたお陰で未遂で済んだのが不幸中の幸いですね。この事件のせいでメイドさんとお客さんに壁ができないことを祈りますよ。